共同生活。

 先月半ばに、家に出たネズミ対策のために母が猫をもらってきた…のはいいのだが、随分と人見知りをする猫だった。今現在は本棚などで高低差があり、なおかつ爪とぎをされても畳ほど被害の出ない私の部屋(絨毯敷き)で共同生活を送っている。
 どうもテレビ台の中に寝かしてある箱三郎の上がいたく気に入ったようで、箱三郎のフィルタって売ってたっけかな、と頭を悩ます日々である。

 

 ところがつい数日前、私の不在時にドアを開けた祖母の隙をついて猫が外へ出てしまった。まいった。
 結構な交通量の道路が眼前にあるし、ここらは元豪農の地主さんが多いので畑に逃げ込まれたら追いかけようがない。一家総出で大騒ぎである。

 が、ふと思いついて玄関先に猫缶を皿にあけて出しておいたら物の三十分もしないうちにぺろりと消えていた。一安心。玄関を細く開けて家の内側に餌皿を置いて待つことに。
 が、これが敵もさるものでまるで捕まらない。退路の確保と機動力が半端なく、以前の飼い主から大好物と聞かされたカマンベールチーズでおびき寄せるも口にくわえたまま颯爽と走り去っていく始末。しかも大概食事に来るのが深夜から明け方にかけてなので、食事時間が唯一の捕獲のチャンスである我が家としては玄関を開けたまま夜っぴて待ち受けねばならない。
 はっきり言って寒い。
 最も玄関に近い部屋にいる祖母には、私の部屋から羽毛布団が支給された。私は母から登山用の靴下を借りて玄関口でノートPCをカイロ代わりに寝袋で待機。
 寒い寒いと口々に呟きつつ、既に家族全員大いなる猫バカと化していた。

 マタタビで酔っ払わせた隙に扉を閉じてしまうという作戦も立てたのだが、「クソッ、まるで効果がない!」「ヤツは化け物か?!」という結果に終わる。気がつけば別の猫が寄り付いてきて、ケンカと思しき声が御近所に響き渡るハメになった*1。頭抱えつつ後悔しきり。

 そしてようやっと一昨日、陣地奥深くまで引き込んで身柄確保に成功したわけだが、案の定総員思い切り風邪を引き、祖母、母、私の女三代、ずるずると白粥をすすりつつ今に至る。ぶつくさ文句を言いながら全員顔は笑っている。アホだ。

 で、当のお猫様はというと、

 

 

 肉球と足先を多少くすませて帰還した後、ぐっすり眠っている。それでこそ猫というものである。
 

*1:随分貫禄のある茶トラだったのでやはりどこかの外猫かもしれない